モミモミンの店主、霊図美杏は、中年主婦に絶大な人気を誇る手技の持ち主だ。彼女の専門は「足裏」だ。足裏は、実は、女性にとって女性器、乳房に次ぐほどの性感帯なのだ。中世ヨーロッパでは、足の性感帯を刺激する役目の使用人を抱えていた金持ちもいたという。


特に足の指と指の間への刺激は、女性を頂点へと運んでくれる。足裏を指先で優しく愛撫することで、女性は今まで知らなかった快感に打ち震えるのである。何度か、モミモミンに通った主婦に、霊図美杏店長は、少しづつ、足裏性感帯開発施術を加える。臆面もなく感じまくった主婦は、以後、霊図美杏の言いなりとなる。霊図美杏に甘い眼差しを向け、手技を懇願する。こうなったら、主婦は店長の言いなりである。


頃合いを見計らって、「この精力剤、すごく効くのよ」と、目を熱い濡れタオルで覆われた主婦の二の腕にチクンとシャブの注射器を打つ。シャブの水溶液を入れたインシュリン注射器は、針が極細なので、ほとんど気が付かないうちにシャブが体内に送り込まれる。


霊図美杏の性感手技と相まって、シャブの快感が全身を掛け巡る。さらには、霊図美杏店長が、おもむろに足指に舌技を加える。陶酔の時である。かくして、主婦は、霊図美杏店長の完全奴隷となり、シャブ中毒となり、義母の保険金殺人に賛成させられるのだ。


義母をぶっ殺して金に換えたい中年主婦。これはこれで絵が描ける相手ではあるが、コストが掛かる。義母の死亡時保険金の半分は、主婦に取られてしまう。苦労するのはこっちなのに、実入りが少ない。


一番あり難いのは、カモ本人が網に掛かってくれるケースだ。70代の呆け老人本人が、モミモミンの店にやってくることがある。マッサージ店は、普通なら、この類の客を嫌がる。施術中に粗相をしてベッドを汚したりするからだ。だが、モミモミンの霊図美杏店長は、大喜びで呆け老女を迎える。至れり尽くせりで施術し、喜ばせる。紅茶を飲ませるが、毎回少しづつシャブを溶かし入れておく。15分くらいあとから覚醒効果が発生する。呆け老人は、急に元気になって「モミモミンで足揉んでもらったら、こんなに元気になった!」と喜んで帰っていく。


さて、この婆さん、連れ合いはとっくに亡くなったようだ。子供はいるのか?財産はあるのか?「カモ」なのか「ハズレ」なのか?いろいろ調べなくちゃいけない。だが、調べるにしても、司法書士や弁護士でないと、調べようがない要件がある。だから、悪徳弁護士の加担が必要になってくるのだ。(続く)


さて、猫角家の不正の原点、 自動車保険詐欺に立ち返ってみよう。


実は、自動車保険の保険金詐欺は、生命保険に比べて金額は小さいが、発生頻度は非常に高い。自動車を盗まれたと偽って、車両保険を受け取る。自動車事故で怪我を負ったことにして、治療費と休業補償を受けとる。事故により車体が損傷したとして、修理代を受け取る。こういった自動車保険詐欺の損害は、年間で数千億円に達しているという。


最近の「流行り」に注目してみよう。たちの悪い修理業者は、自らレンタカー業を兼営しておき、修理中の代車として、自社のレンタカーを客に貸し出す。もっとも、客の自動車保険にレンタカー費用を補償する特約が付いている場合だけに限るが。かくして、修理業者は、保険会社からレンタカー代金を受け取ることができるが、ここで小金を稼ぐわけだ。数日で修理ができるようなケースでも、旧式のベンツだから部品の取り寄せに時間が掛かるといった言い訳を使って、客にレンタカーを貸し続ける。客は、保険会社の負担で、代車の高級外車に乗れるのだから文句はない。


もっとたちの悪い例では、修理は3日で終わって納車しているのに、30日間、レンタカーを貸出したことにして、客と口裏を合わせておく。損保から入ったレンタカー代から、客にキャッシュバックする。客は、これだけで、何もしないでも、たっぷりと返戻金を受け取れるのだ。例えば、2007年モデルのベンツ、S350を一か月借りると、レンタカー代金は140万円近くになる。ここから、客にいくらキャッシュバックするのか?


客が4台の自動車を所有しているとする。常に1台が、事故や故障による修理に回されていて、その間、代車のレンタカーが修理工場から提供されていることにする。これで修理工場から、キャッシュバックが貰える。金額は小さいが、1年を通じて、現金が入ってくる仕組みだ。


この種の修理工場と客の結託による自動車保険詐欺は、日本全国で数百社で実施されているのだ。札付き工場は、レンタカー費用を支払限度日数ぴったりで請求してくるなど、どう見ても不自然な請求を乱発してくる。損保会社も、当然ながら、疑いの目で見ていて、ブラックリストができつつある。従って、捕まらないまでも、新たに保険を引き受ける損保がなくなってしまうのだ。


猫角姉妹の車の保険の引き受け手がなくなったのは、実は、この手口を多用しすぎたからなのだ。経営不振で、この種の詐欺商売に手を出した名古屋のホースエージ自動車工場には、実は、随分と事故車を持ち込んだ経緯があったのだ。


この種の詐欺ビジネスだが、逮捕されると意外に刑罰が重い。10年以下の懲役が課せられる。この小説のこの部分を読んで、急に呼吸が荒くなり血圧が上昇している紳士がいそうだが、命に別状がないことを願う。(続く)


猫角姉妹と名古屋のホース・エージ修理工場の中華麺社長(仮名)が組んで起こした「自作自演詐欺」も、自動車保険を悪用した成功例だった。中華麺社長が用意した偽装事故の相手方、名古屋中区のチョン某と猫角克子が乗用車同士で交通事故を起こしたことを偽装する。克子は、事故でむち打ち症になったことにする。克子は、HA社の中華麺社長が指定してきた海千病院にて整形外科の医師、山千鷺夫の診察を受ける。「山千先生じゃないとだめですよ。話し通してありますから。」と中華麺社長は、念を押したのだ。


克子は、痛くもなんともない首筋をさすり、「先生、事故以来、首が回らないんですよ」と真っ赤な嘘の申告をする。「借金で首が回らない」なら、あながち嘘ではないが。


事情を分かっている山千医師は、診察などしようともせず、克子にニヤリと目配せをして、「重度の頸椎ねん挫を患った。30日の休養安静を必要とする。」との診断書を、たったの30秒で作成してくれる。いつも使っている診断書のフォーマットの日付と患者氏名を変えただけなのだ。あとは三文判を押すだけだ。診察が始まってから、正確に、3分15秒後には、克子は、欲しかった通りの診断書を手に診察室を後にしていたのである。


毎日のように偽診断書を発行して、小金を手に入れている山千ドクターである。毎晩のように、キャバクラでお気に入りのペストちゃんかマラリアちゃんを指名して豪遊できるのも、偽診断書の需要のおかげなのだ。


休業補償だけではない。自動車の損傷についても、ホース・エージ修理工場が「大破した」旨の報告書を書いてくれれば、実際の損害よりも高額の保険金を受け取ることができる。こうして、世の中が自動車保険詐欺に寛容であった時代には、猫角姉妹も中華麺社長も、そこそこ儲けることができたのだ。


だが、時代の趨勢は、保険金詐欺業界に暗雲をもたらした。あまりに頻発する不審な請求に、損保会社が対策を取り出したのだ。損保会社は事故の当事者だけでなく、同乗者や修理工場、医療機関まで調査をするようになったのだ。結果、不正に加担した疑いのある修理屋と病院を割り出すことができるようになった。ブラックリストに載った修理屋、病院を使った不正請求を不可能にしたのだ。


かくして、猫角姉妹、中華麺社長の自動車保険錬金術は、ついに暗礁に乗り上げたのである。(続く)


自動車保険の不正請求が今日まで、黙認され放置されてきたわけではない。2013年からは、自動車事故を偽装するなどの保険金不正請求への対策が、損保協会の手で講じられた。不正請求や疑いのある支払いデータの共同利用が開始されている。損保協会に集約されたデータを各社が共有利用できるようになっているのだ。各社は、疑わしい契約者氏名、住所、生年月日、事故の状況、病院名、修理工場名などをデータに登録する。このデータに登録されている「札付き」は、新規の契約からはじかれることになる。ただし、疑わしい契約者がすべて登録されているわけではないから、不正の水際防止が完全に行える状況には、いまだにないと思われるが。


とにかく、この2013年の措置で、野放図だった自動車保険詐欺には、一定の歯止めがかかるようになった。ということは、それ以前なら、かなり自由に不正が実行できたということだ。派手に不正を敢行していた猫角姉妹の介護会社は、真っ先に「札付き」顧客の認定を受けて、新規に自動車保険を掛けることができなくなった。どこの損保に電話しても、長く待たされた挙句に「当社ではお取り扱い出来かねます。」と、慇懃無礼に断られる。


蜜子は逆切れして、損保の電話口の女の子を口汚く罵る。仕舞には、損保の女の子は泣き出してしまう。代わって電話をとった部長職を相手に、蜜子は考えうる全ての罵倒句を駆使して、罵詈雑言で責め立てる。怒鳴りすぎて、喉が枯れる頃、蜜子の攻撃はやっと終焉を迎える。1時間も怒鳴っていたであろうか?損保の勤続33年の部付部長、阿玉サゲルは、全身に汗をびっしょりかいて、震える手で受話器を置く。こんな凄いクレーマーは、長い損保人生でも初めてだ。机の引き出しに救心があったはずだ。今すぐ、救心をあるだけ全部嚥下したい。


今日は、やけ酒で荒れそうだ。新橋駅前地下の居酒屋の中国人留学生、リョウさんに慰めてもらおう。あのふくよかな胸に顔をうずめて、号泣できたらどんなにか慰めになるだろうに。「ちくしょー、損保マンなんかになるんじゃなかった….」


姉妹が修理と不正を依頼していた名古屋のホース・エージ自動車修理会社も、データベースのおかげで、もろもろの不正が他社に先駆けて真っ先に浮き彫りになり、損保の代理店契約を破棄されたのだ。だが、それまでの「やりたい放題」の時代、姉妹も修理屋も不正請求で随分と美味しい思いをしてきたのである。


問題は、その頃手にした潤沢な資金を、蜜子がFXギャンブルで片っ端からどぶに捨ててしまったことなのだ。損をすると熱くなるきつい性格の蜜子は、損をリカバーしようと、さらに相場を張り、逆に大穴をあけたのだ。(続く)


蜜子の耽溺するFXとは、いったい何物なのか?


FXとはフォーリン・エクスチェンジの短縮形だ。日本だけで通用する造語だ。「外国為替証拠金取引」のことを指す。為替差益を出すことを目的とする取引であり、要するにギャンブルである。FXに関わる人たちは、「ギャンブルではない」「投資だ」というが、投資もギャンブルである。しかもリスクの非常に高いギャンブル、それがFXである。1ドル100円の時に1万ドル買う。100万円を支払う。暫くしてドル高となり、1ドル120円となる。1万ドルを円に換えると120万円になる。差し引き20万円が儲かったことになる。たかだか20万円だ。もっと利益が欲しい。10万ドル買えば、リターンも10倍になる。200万円の利益が出る。だが、ドルが下がり続けたらどうなるか?


FX取引では「証拠金」を積む。買ったドルが下がり続けると、含み損が発生してくる。このままだと証拠金全額を食い潰してしまう。FX会社は、それを防ぐため、強制的に決済をしてしまう。例えば、証拠金の30%の含み損が発生した時点で、決済が行われる。客は、証拠金の3割を失うが、少なくとも残りの7割を手元に残すことになる。この仕組みを「ロスカット」という。パイプカットではない。マスカットでもない。リストカットでもないが、ロスカットの結果、リストカットする人もいる。ロストカットで、証拠金の3割を失いたくなければ、証拠金を積み増しすることになる。だが、ロスカットは回避できたとしても、損失を拡大する結果になるかもしれない。


FXの最大の問題点は、レバレッジ取引である。少額の証拠金を担保にして、数十倍もの大きな金額での取引ができる。100万円しか現金を積んでいないのに3千万円の取引ができる。うまくあたれば、利益は大きいが、失敗すれば損失も大きい。3000万円も相場を張って、500万の損失を出すと100万円の証拠金が消えて、400万円の借金が残る。中には子供の教育資金1000万円を一瞬で溶かしてしまった母親のケースもある。破産者、自殺者続出である。結果、現在ではレバレッジは25倍が上限に定められているらしい。FX賭博に何の興味もない者には、どうでもいい話だが。


2008年のリーマンショックでは、急激な円高が進み、英ポンドなどを買っていたFX顧客の多くが大損した。2015年には、スイスフランが突如、急騰し騰落率は41%に達した。同じ2015年には中国経済の低迷で、人気のあった豪ドルが対円で30円も下落した。


こういった局面で、大損をこいたギャンブラーたちが、地獄へと落ちていったのである。蜜子もその一人だったのだ。(続く)


FXに耽溺すると、24時間、FX市場に拘束されることになる。市場動向を捕捉して、売り買いを入れる。一時たりとも油断はできない。寝ないで、市場と対峙しなければならない。そうしなければ、金儲けの出来る瞬間を逃してしまうかもしれないのだ。転寝している間に300万円の損失をこしらえてしまうかもしれないのだ。


だが、まともな人間には、寝ないでFX取引に没頭するには、限界がある。まともな人間には….である。まともでない人間は、そんな場合、薬物に頼る。覚醒剤を打てば、場合によっては、一週間寝なくてもなんともない。特に「打ち始め」の頃は、よく、薬が効く。長期間打っていると、弊害、副作用が出てきて人間から、下等動物に代わってしまうが。


覚醒剤が欲しい。どこから手に入れるか?自動車保険詐欺でさんざん世話になった名古屋のホース・エイジ社の中華麺社長(仮名)の顔を思い浮かべる。以前に「シャブ」の話を彼から聞いたことがある。電話をしてみると、しばらく無言が続いた後、「ヤウマトで送ります。」と一言言って電話が切れた。覚醒剤の送付には、事故率の低いヤウマト運輸が使われるのだ。翌日午後、中華麺社長から、宅急便が届く。中を開けてみると、厳重に包装されたポリエチレンの子袋に入った、少量の白い結晶の粉が出てきた。これを水溶液に溶かして、注射するらしい。宅急便の中に、注射器まで入っていたのには、ちょっと、感動した。「中華麺さん、いつも、よく気が付くわ。」だが、請求書も同封されていることに気が付く。「こんな小袋で2万円?ちょっとー、このくらい、無償提供してくれてもいいのに。」自分勝手な蜜子である。


試しに二の腕に溶液をぶち込んでみる。シャブシャブっという感覚が全身を走る。経験したことの無い快感だ。暫くすると、自分が何でもできるスーパーウーマンになった気分がする。何にも怖くない。眠気も吹っ飛んだ。プロ野球の喜代原という選手は、シャブを打って3試合連続のホームランを打ったという。「きっと、私も、シャブのおかげでFXで大当たりするわ!」しないしない。大損ならするが。(続く)


介護ビジネスの不正請求やら、自動車保険詐欺やらであぶく銭を手に入れてきた小悪人は、生業には戻れなくなる。真面目にコツコツと介護事業をやるという原点など、どこかに置き忘れてしまっている。FXで開けた大穴を糊塗しようと、日々、金策に走り回る。億近い損失を出したなどと、姉の克子にばれたら大騒ぎになる、罵倒されると恐れる蜜子。


ヤクザな街金にも手を出す。こうなってくると、起死回生、大逆転のホームランを打たなければ、事態を打開できない。方々から借りた金で、またまた、FXの相場を張る。レバレッジ取引で張れるだけ最大限張る。こういう時に限って、損をする。大きく張るので、損失も大きい。傷口が広がるだけの結果となる。


この世の中には、詐欺行為でしか生きられない人種が存在する。詐欺で容易に金儲けができると知った輩は、目の前に詐欺のネタが転がっていると、どうしても詐欺行為を働かないと我慢できない衝動に駆られる。金額の多寡は関わりがない。少額でも騙せると分かっているのに騙さないのは「義務違反」のように感じてしまうのだ。結果、人生の主たるテーマが詐欺行為となってしまうのだ。


日々、朝から晩まで、人を騙すことしか考えなくなる。62歳の婆さんが、38歳を偽装して、資産家から7億円を集めた事件が注目を浴びている。詐欺しかできない病気なのである。


蜜子は、FXは諦めた。詐欺商売で一発逆転を狙うしかない。痴呆の婆さんをぶっ殺して財産を没収し、保険金を掛けて金に換えるしかない。では、どうやって?やっぱり、成年後見人制度を悪用するしかない。ああ、時間がない。すぐにやらないと。それにしても、どうやって、カモを見つけるのか?カモを見つけるのが先決じゃないのか?


成年後見人制度の黎明期、後見人となったのは、親族が多かった。司法書士や弁護士も後見人となったが。蜜子は残念ながら、そのどれにも該当しない。だが、一部の「介護士」が後見人として認められるケースは少ないがあったのだ。当時の「介護士」の資格審査は、かなりいい加減であり、蜜子もそれほど困難なく取得することができた。


カモの老人を見つけ、うまく立ち回って、成年後見人となり、財産を勝手に処分する。これしかない。だが、婆さんはどうする?財産を処分したのがばれるとまずいから、早々にくたばってもらった方があり難い。だが、最近の老人は堅牢だ。なかなか死なない。だったら、死んでいただくしかない。死んでしまえば、財産がどう処分されたかなど、詮索する向きもなくなる。それに、大手を振って財産を取り込む作業に就ける。(続く)


介護士、正確には、介護福祉士とは、国家資格である。厚生労働省が管轄する資格である。この資格を持っている方が、介護の現場では、待遇面では多少は有利である。だが、積極的に資格を取得しようとする人は少ない。2000年に介護保険制度が施行されてすぐに、介護現場は、恒常的な人手不足に悩まされた。どんなに程度の低い人材でも、介護現場では大事にされた。滅多なことでは首にはならなかった。


あるデイサービスの経営者だった人物は、こう語っている。


最初から普通ではなかった。開設前の職員の求人面接に遅れずに来た人は半数程度。来たとしても「できるだけ楽な仕事をしたい」「すぐに有給休暇を全部欲しい」「朝、起きれるかわからない」など、常識を逸脱したことを平気で言う人がたくさんいた。


この種の社会の最底辺のグズが参集する職場、それが、介護の現場である。収容者に対する暴力、セクハラ、何でもありである。収容されている老人3人を介護施設の窓から放り投げて殺した事件が記憶に新しい。(勿論、立派で誠実な介護職員はたくさんいる。)


汚くてきつい仕事、長時間労働、低収入。誰もやりたくない仕事だから、いつでも人が足りない。1年中募集をしている。こんな劣悪な労働環境でも働きたいと思うボランティア精神旺盛の人がいるのだろうか?いるであろう。だが、少数だ。


訪問介護?悪質なヘルパーには、稼ぎどころの労働環境だ。家探しして金目の物を盗み出す。現金が一番いい。管理の緩い家なら、呆け老人の財布を預かって、勝手に預金を引き出す。給与など取るに足らない。無くたって構わない。あちこちの家に入り込んで、爺さん婆さんの金を拝借する方が、はるかに実入りがいい。訪問介護が一番、犯行をやりやすい労働環境だ。そんな些細な犯行を躊躇するくらいなら、介護職なんかに就いてはいない。もし、ばれてしまったら?しらばっくれればいい。会社も人手不足で滅多なことでは解雇しない。派遣先を変えるくらいで話は収まる。証拠がない限り、捕まることはない。


「どうせ、婆さんが金を持っていても、馬鹿息子にせびられるだけだ。私が有効に使ってやるんだから、ありがたく思え。」


50代の介護職の女は、自分の性を金儲けの道具にする。介護施設に収容された老人男性は、いくつになっても「男」であることに変わりはない。身の回りの世話をしてくれる女性介護職の体を触る。乳を揉む。口元からよだれを流しながら、尻を触る。呆けているから、理性のブレーキが利かないのだ。「はいはい、駄目ですよ」と払いのけながらも、少しは触らせてやる。毎日のことだ。いちいち目くじらを立てるのも面倒になってくる。79歳の老人には、53歳の女体が、妄想を掻き立てる、夢にまでみるビーナスの裸体なのである。


触らせてくれる介護職、蘆原某には人気が集まる。爺さんは。呆けた頭で、蘆原某の関心を買いたいと願う。おむつの交換に来た蘆原某に、くしゃくしゃになった1万円札6-7枚を差し出す。他の人に見られるとまずい。すぐさま、お札を介護服のポケットにねじ込んだ蘆原某は、おむつの交換のために尻を上げた老人の局部をさり気なく触ってあげる。老人は歓喜し、うめき声を上げる。蘆原某は、おむつの交換にかこつけて、薄い乳を老人の二の腕に押し付け、7万円の寄付金に見合ったサービスを提供するのであった。寄付金に見合ったサービスかどうかは、かなり疑わしいが。


50代だが、色白、細面で若く見える介護職、蘆原某は、未だに独身であった。同性愛者だったのである。(続く)


一般論ではあるが、女性同性愛者の多い職業というと、看護職、介護職だという。3位が公務員というのが、興味深いが。要するに、人の体を触る仕事にレズビアンが多いということのようだ。レズビアンは、結婚しないし、子供も作れないから、一生自分だけで生きていくしかない。だから、公務員を目指すということらしい。その結果、公務員にレズビアンが多くなる。


看護職にレズビアンが多いということを示唆してくれたのが、福岡の連続保険金殺人犯、吉田純子であった。3人の同僚看護師をレズビアン仲間に引き込んで、女王として君臨した。同僚の看護師の夫二人を殺害して首尾よく保険金詐欺に成功した。同僚の池上某の夫に、池上が睡眠薬と酒を飲ませ眠らせる。その夫に四人はカリウム製剤と空気を注入した。夫は死に、保険金3450万円が支払われた。


カリウム注射は、人を殺すには最適の薬剤である。ほぼ確実に「心停止」する。元々は血液中のカリウム濃度の低い患者に、点滴に混ぜたりして投与するのだが、これを直接静脈に注射すれば、心臓は止まってくれる。さすが、看護師ならではの殺しの手口である。


同僚石井の夫の場合は、睡眠薬と酒で眠らされ、胃にチューブを挿入して酒を直接流し込んで、急性アルコール中毒で死亡するように企んだ。だが、なかなか死なないので、吉田の指示で空気を注射した。石井の夫は、救急車で運ばれ、病院で息を引き取った。保険金3300万円と退職金の大半は、吉田が分捕った。


「急アル」で死亡まで持っていくのは、結構ハードルが高い。だから、極端にアルコール度数の高い酒を無理やり飲ませる。保険金殺人史上名高い、上申書殺人事件の例では、被害者の口を無理やり開けさせ、度数の高い蒸留酒を丸ごと一本、無理やり飲ませている。


空気の注射とは、空気を静脈に送り込むことで空気塞栓を引き起こし殺害する方法である。成人なら、300ミリリットルを注入すれば死亡するという。空気塞栓で亡くなった場合、解剖では死亡原因を特定できないようだ。CTスキャン装置によるオートプシーイメージングが検出に有効と思われるが、未だ、検視段階ではほとんど使われてはいないようだ。それどころか、不自然な死亡例のうち、検視に回されるのは11%程度に過ぎないのだ。吉田純子は、急アル+空気注射なら絶対にばれないと踏んだのだろう。


吉田純子は、やりすぎた。事件は発覚し、女性には珍しく、死刑が執行された。戦後5人目の女囚の死刑執行であった。同僚看護師を操り服従させる場面で役だったのが、レズビアンの技術だった。(吉田に娘が3人いることが痛ましい。3人が、その後どんな人生を送っているかを考えると、心が塞がる思いがする。)


女性同性愛と通常の男女の行為との大きな違いは、前者には「際限がない」ことである。後者は、男性が「果て」てしまえば終了となる。だが、前者は、どちらも果てることがない。延々と続く。7時間も10時間も続くことがある。男女間よりも濃密で深い性関係が築かれるのだ。そのための器具も多用される。電動こけしなど、実は、レズビアンにより使われるケースが多いのだ。


マッサージなどの人の体を触る仕事に従事する者も、人数は少ないが、レズビアン率は異様に高いようだ。(続く)


実は、米国では、同性愛者は、ストレートに比べて薬物中毒者の割合が2倍以上になるという調査結果が出ている。米薬物乱用・精神衛生管理庁が2015年に行った調査によると、ゲイ・レズビアン・バイセクシャルと自ら認めている人たちの39.1%が、その前年に不法薬物を使用したと明らかにしている。一方、ストレートの場合、17.1%だった、


ストレートの17.1%でも、とんでもなく恐ろしい数字だが、米国の同性愛者の5人に2人が「薬中」だということだ。米国の薬物汚染の深刻さがうかがえる数字だ。残念ながら、日本では、この類の調査は行われていないようだが。

しかしながら、恐らく、日本のレズビアンのシャブ中率は、無視できない高さであろう。なぜ、そう考えるか?レズビアンを大量に養成する機関がある。女子刑務所というところだ。女子刑務所に入所している受刑者のうち、29歳以下では、52.4%、30歳代では53.9%が、40歳代では44.4%が…..覚せい剤取締法違反者なのである。つまり、受刑者の二人に一人はシャブ中ということだ。

女子刑務所の受刑者の「罪状」で、覚醒剤犯の次に多いのが「窃盗」だ。年代によって違うが20-30%を占めている。風俗店の従業員控室で、同僚の鞄の中の財布から現金を抜き取る。財布から銀行カードを盗んで、預金を引き出す。普通に毎日起きている窃盗行為だ。何故、そこまでして金を手に入れたいのか?多くの場合、「シャブを買う金欲しさ」の犯行なのだ。シャブを手にするためなら、何でもやる。もはや、人間ではなくなっているのだ。そんなジャンキーであっても、収監時に覚せい剤反応が出なければ、ただの窃盗犯として収監される。尿検査では、最後の注射から少し時間がたっていれば、覚せい剤反応が出ないことがあるのだ。特に、利尿剤で強制的に排出してしまえば、2-3日で反応は検出されなくなるのだ。ただの窃盗だけでなく、覚醒剤事犯まで加算されれば刑期は長くなる。だから、誰もが黙っている。つまり、覚醒剤犯と覚醒剤欲しさによる窃盗犯を合計すれば、女子刑務所のシャブ中率は、さらに高くなるということなのだ。


そのシャブ中だらけの女子刑務所では、何年もの間、女だけの生活が続く。性欲の処理は、女同士で行うしかない。看守の目を盗んでのレズビアン行為が横行する。ボーイッシュな、宝塚の男役のような受刑者が、受刑者の間で人気を博す。


女子刑務所で同性愛をたっぷり学んだ元シャブ中が、刑期を終えて娑婆に出てくる。また、シャブに手を出す。シャブ中に逆戻りだ。(再犯率は65%程度か。)同時にレズビアンにもなっている。「レズでシャブ中」が増えていく。刑務所が、レズシャブを養成しているわけである。養成されたレズシャブは、市中で知り合ったレズ相手をシャブ中に変えていく。性交渉を飛躍的に魅力的なものに変えるシャブ抜きには、充分に楽しめなくなっているのだ。


覚醒剤を打って性交渉をすると、快感が倍増する。「すぐに逝きやすくなる」ということらしい。だから、新宿歌舞伎町のラブホテルの清掃係の大事な仕事は、ベッドの下に投げ捨てられた覚醒剤用注射器の回収なのだ。とても危険な仕事だ。分厚いゴムの手袋でもしないと、ラブホの掃除などできないのだ。


ちなみに、覚醒剤を摂取する方法は、注射以外に「炙り」もある。アルミ箔の上に覚醒剤結晶を置いて、ライターで炙って煙を吸う。この方法なら、注射痕が残らない。野球の喜代原は、この方法を用いていたようだ。だが、誰もがこの方法を採用するわけではない。静脈注射で、打った瞬間、「シャブシャブ」と来る快感がたまらないというジャンキーもいる。だが、最大の理由は、「炙り」だと、覚醒剤の消費量が倍になってしまうという点だ。1パケ2万円の高額商品だ。金持ちでなければ、「炙り」は継続できないのだ。


猫角姉妹の周囲には男の臭いがしない。それには事情がある。男の臭いはしないが、その代わりに甘いバラの香りが漂っている。女同士の…..。蜜子のお相手は誰であろうか?思いにもかけない「お相手」がいたかもしれない。例えば、肉親とかである。姉妹の周囲には、バラの香り以外に薬物の臭いも漂っているのだ。(続く)


日本の刑務所は、覚醒剤犯で溢れかえっている。男子刑務所も女子刑務所も同じ状況だ。収容者数は、刑務所定員のほぼ100%に相当するが、地方によっては定員をオーバーしているところもある。


覚醒剤犯は、刑期を終えても働くところがない。結局、闇の世界に舞い戻って、1年もしないうちに覚醒剤の再犯で刑務所に逆戻りする。再犯率は65%を超える。


一方で、どんなクズでもいいから働き手を欲しがっている業界がある。介護業界だ。介護の現場では、労働力が絶対的に足りていない。きつくて汚い仕事なのに、報酬は驚くほど低い。2015年の法改正で介護報酬が大幅に下方修正された。おかげで介護の現場の非正規雇用の人たちの給与は、極端に抑えられることになった。それ以前でも、生活できるレベルではなかったのに。だから、誰もこの業界で働こうとしない。当たり前だ。福祉関連の短大や専門学校も、学生が集まらない、定員割れの状態だ。


介護職の有効求人倍率は、全国平均で2倍超であり、東京に限れば、4.34倍である。高齢化が先行している大都市圏では、特に介護職の人材不足が顕著になっている。政府は、インドネシア辺りの若い女性が日本の国家試験に受かれば、在留資格を与えるとして、介護現場の人手不足を緩和しようとした。だが、ほとんど、試験に受からない。2009年には、政府は、失業者やホームレスまで対象にした「重点分野雇用創造事業」を実施し、介護業界には、普通ではない人たちが送り込まれた。それでも全然足りないのだ。この常軌を逸した政策、何ら、結果を生まなかったようだが。


今、介護施設に面接に行けば、どんなチンピラでも即時、採用される。シャブ中でも見て見ぬふりをされる。日本が誇るクズの中のクズが、介護業界に集まる。ついには、刑務所で、介護業界への就職を念頭に置いた訓練まで始まった。シャブ中崩れが、出所したら、まっしぐらに介護施設にやってくる。


勿論、こつこつとひたすら介護の仕事に、真面目に取り組んでいる人たちはいる。その人たちにおんぶにだっこで、介護事業はかろうじて成り立っている。だが、クズも紛れ込んでくる。自然と、介護事業には不祥事がつきものになる。


覚醒剤中毒者は、「打ち過ぎ」で、突如、勤務を休んだり、奇行に走ったりする。普通の企業では、長続きしない。だが、介護の現場では、そんな人材でも首にはならない。施設長は、歯を食いしばって、どうしようもない従業員を許す。許すしかないのだ。そんな「大甘」な職場だからこそ、シャブ中の巣窟となる。シャブ中は、平気で、老人を窓の外に放り出したりする。もはや人間ではないから、人間の命の価値など分からないのだ。


日本の高齢化はますます進んでいる。2025年までに現在の介護職240万人を350万人まで増やさないと、業界が破綻するという。介護2025年問題だ。

50代のシャブ中男、真っ黒(仮名)は、数年前に介護業界に転職してきた。前の職場では、シャブ中による奇行や本人の猜疑心などで、勤務が続けられなくなった。シャブ中が進行するとひどい被害妄想に囚われる。常に見張られているのではないか、警察に尾行されていないかとびくびくする。幻覚や幻想に襲われる。目の前を自転車に乗った熊が通り過ぎていく。これでは、真っ当な会社で仕事は続けられない。自己都合で退職する。

0過ぎて再就職先を探してはみたが、介護業界以外、求人はなかった。横浜あたりの介護施設にヘルパーとして入ることにした。そこは悪の巣窟だった。職員の半分はシャブ中。セクハラ、パワハラは年中行事。収容者は人間扱いされず、徘徊者は平手打ちで制裁される。だが、真っ黒(仮名)には、結果的に、理想の職場だったのである。


シャブ中は、金がないと続けられない。1パケで2万は掛かる。もっとも、この値段は、玄人さん向けであり、市場価格を知らない素人さんには、1パケ20万で売られる場合もある。覚醒剤の効力があるのは打ってから数時間のみだ。真っ黒は、シャブをもっと頻繁に打ちたい。そのためには、金を稼がなければならない。だが、介護施設の給与など、シャブを10袋も買えない金額だ。お話にならない。ちなみに、シャブは、ネットで簡単に買える。隠語を使って「シャブを売っている」と分からせるサイトがいくらもある。そこに注文すれば、ヤウマト運輸の宅急便で、すぐに送ってくる。ソガワ急便は、いい加減なので使えない。(続く)

真っ黒は、施設の収容者には、人気がある。よく気が付く、意欲のある介護職だと思われている。明るく快活な介護者を標榜しているからだ。実は、シャブが効いていてハイになっているだけなのだが。


真っ黒は、お爺ちゃん、お婆ちゃんたちから信頼されている。だから、真っ黒がシフトに入っているときに、お婆ちゃんの小銭入れから2-3万円の現金が消えていても、真っ黒が疑われることは、まずない。おばあちゃんたちが、真っ黒の味方になってくれる。「真っ黒さんが、泥棒なんかするわけないじゃない」と。施設側も、それ以上追及はしない。数日もすると、この話は立ち消えとなり忘れ去られる。警察沙汰にもならない。


収容されているご老人たちは、基本的に呆け老人である。だから、金の管理などできない。たまにいやいややってくる家族が、小銭入れの中身を確かめて、足りなければ万札を補充していく。「あら、お爺ちゃん、お金をなにに使ったのかしら?本人に聞いても要領は得ないし。」と、嫁は首を傾げながらも、背中を丸めてパートの仕事に戻っていく。


真っ黒の小遣い稼ぎは、今のところ破綻していない。金を抜きやすい、発覚の恐れが低い「カモ」の収容者が判別できているから、ターゲットを定めて、少しづつ、犯行を重ねていく。だが、大きくは稼げない。シャブを好きなだけ買うには全然足りない。


真っ黒がシャブを調達するのは「ネット売人」からである。シャブに手を出した当初、真っ黒がお世話になったネット売人は、名古屋のハンドル・ネーム「CRACK」だった。クラックと聞いて、すぐさまピンときた。「あ、この人、絶対、薬物売ってるぞ」と。クラックとは、クラック・コカインの略であり、高純度のコカインを意味する。これに手を出して命を失ったジャンキーがどれだけいることか?ジャンキーならだれにでも分かるように、ネット売人はわざわざ「クラック」をHNに使用したのだった。(続く)






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超短編小説「猫角家の一族」その1~12まとめ

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